水泳を習う子はなぜ伸びる？｜心理学でわかる“脳と心の成長メカニズム”

子供の成長

2025.11.10

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「みんな通ってるけど、水泳ってそんなにいいの？」
「運動が苦手なうちの子でも大丈夫かな？」

そんなふうに悩む親御さんは多いと思います。

実は――水泳は“最もバランスの取れた習い事”のひとつ。
体だけでなく、脳・心・メンタル・学習能力まで育てる効果があるんです。

この記事では、児童福祉の現場で10年以上、発達や行動の変化を見てきた僕が、
「水泳の科学的な良い影響」「注意すべき点」「親の関わり方」を具体的に紹介します。

水泳が人気の理由

文部科学省の調査によると、小学生の約6割が一度は水泳を習った経験があり、
スポーツ習い事としては常にトップクラスです。

人気の理由は、
・体力・心肺機能を高める
・姿勢・集中力が整う
・コツコツ努力する習慣が身につく
といった総合的な効果が期待できるからです。

水泳が子供の脳と心に与える良い影響

① 集中力・記憶力がアップする

水泳のリズミカルな動作は、脳内の前頭前野と海馬（記憶の中枢）を活性化させます。
アメリカ・ハーバード大学の研究では、有酸素運動を習慣化した子供は、
注意力とワーキングメモリ（作業記憶）が向上したと報告されています［Ratey, 2008］。

つまり、水泳は“脳を鍛える勉強前のウォーミングアップ”になるのです。

② ストレスを発散し、情緒が安定する

水中の“浮力”と“静かな環境”は、脳の緊張をほぐし、セロトニンを分泌させます。
このホルモンが増えると、不安・イライラが減り、心が落ち着くんです。

また、水に包まれる安心感は、子どもの情緒を安定させ、
自己調整力（気持ちをコントロールする力）を高めます［厚労省, 2023］。

③ 継続体験が「自己肯定感」を育てる

水泳は一気に上達しません。
でも、練習を積み重ねて「25m泳げた！」「タイムが縮んだ！」と実感するたびに、
「できた！」という達成体験が自信に変わります。

これは心理学でいう自己効力感（self-efficacy）の成長であり、
失敗を恐れず挑戦できる子に育つ基礎になります［Bandura, 1997］。

④ 姿勢と集中の“自律神経”が整う

水泳は呼吸リズムを意識するため、副交感神経（リラックス）と交感神経（集中）の切り替えがスムーズになります。
これは脳の“集中スイッチ”を上手にオンオフできる力を育てるトレーニングです。

注意したい“悪い影響”と対応法

① 過度な競争がストレスに

進級テストや大会で「比べられる」環境が続くと、
子供によっては“劣等感”や“プレッシャー”を感じやすくなります。

対策は、「結果」より「努力のプロセス」を認める声かけです。
「合格できた？」より「今日も練習よく頑張ったね」と伝えるだけで、脳は安心します。

② 親が“結果”を急ぎすぎる

「いつ25m泳げるの？」という質問は、
子供に“評価される緊張”を与えます。
大切なのは、「少しずつ進んでいるね」とペースを尊重する姿勢です。

③ 水が怖い子への無理強い

水への恐怖は「感覚過敏（脳の防衛反応）」であることも多いです。
焦らず、顔つけ・バタ足など、段階的に成功体験を積ませることがポイントです。

家庭でできるサポートと声かけ

① 練習後は“結果よりリラックス”

「どうだった？」より「気持ちよかった？」と感情を共有する。
水泳は体だけでなく“心の調律”でもあります。

② できた瞬間を見逃さず褒める

「今日は顔をつけられたね」「姿勢がきれいだったよ」と、
小さな前進を言葉にして伝えることで、脳が「次もやりたい！」と学習します。

③ 習い事後の“休む時間”を大切に

水泳後は交感神経が活発。
しっかり食べて休むことで、脳と体の回復→成長がスムーズになります。

まとめ｜水泳は「努力が自信に変わる」習い事

水泳は、
・体を鍛え
・脳を刺激し
・心を落ち着かせ
・自己肯定感を育てる

――まさに“成長の土台”を作る習い事です。

水泳の本当の価値は、泳ぐ速さではなく、
「昨日の自分より少し前に進めた」その実感にあります。

親がそれを一緒に喜んであげることで、
子供は「自分の努力を信じられる子」に育ちます。

【内部リンク】

FAQ

Q1. 水泳を習うと勉強にも良いって本当？
→ はい。有酸素運動により脳内のBDNFが増え、学習効率・記憶力が上がることが報告されています。

Q2. 水が怖くて泣いてしまいます。どうすれば？
→ 無理に克服させず、「今日は顔をつけられたね」など“段階的な褒め”を重ねましょう。

Q3. 大会に出たがらないのは悪いこと？
→ いいえ。競争より“楽しさ”を重視するタイプの子もいます。モチベーションの形はそれぞれです。

参考文献

Ratey, J. J. (2008). Spark: The Revolutionary New Science of Exercise and the Brain. Little, Brown and Company.
Bandura, A. (1997). Self-Efficacy: The Exercise of Control. Freeman.
American Psychological Association (APA). (2022). Exercise and Child Emotional Regulation.
厚生労働省. (2023). 子どものスポーツ活動とメンタルヘルスに関する報告書. https://www.mhlw.go.jp/
文部科学省. (2023). 全国学童スポーツ活動実態調査報告書. https://www.mext.go.jp/