「字をきれいに書けるようになってほしい」
――そんな軽い気持ちで始めた“習字”が、実は子供の心を大きく成長させることをご存じですか?
筆を持つ、息を整える、ゆっくりと線を描く――この一連の動作が、
脳の前頭前野(集中力・感情制御)を活性化し、心を静める訓練になります。
今回は、心理学・脳科学の観点から「習字が子供の発達に与える影響」を、
家庭でのサポート方法とともにわかりやすく解説します。
習字が子供に人気の理由
近年、再び注目を集めている「書道」。
文部科学省の調査でも、小学生の人気習い事ランキングで常に上位です。
その理由は、
・姿勢・集中力が身につく
・丁寧さ・落ち着きが育つ
・字を書くことで自己表現ができる
という“心と行動の成長”を同時に促す教育的メリットがあるからです。
習字が脳に与える科学的効果
① “集中力の司令塔”前頭前野を鍛える
筆をゆっくりと運ぶ動作や、墨のにおいを感じながら呼吸を整える行為は、
脳の前頭前野を活性化させます。
この部分は「注意の持続」「感情の抑制」「判断力」を司る場所であり、
習字を続けることで、集中できる脳が育ちます[Davidson, 2019]。
② “呼吸のリズム”で自律神経が整う
習字では自然と深呼吸が多くなります。
その呼吸が副交感神経を優位にし、心拍やストレスホルモンを安定化させる効果があると報告されています[厚労省, 2023]。
つまり、習字は“書く瞑想”ともいえる心のトレーニングなのです。
③ “手の微細運動”が脳の発達を促す
筆先の細やかな動きは、脳の運動野や感覚野を刺激します。
その結果、空間認識力・手指の巧緻性・イメージ力が発達します。
特に幼少期に筆を使うことは、脳のネットワーク形成に良い影響を与えることが研究で示されています[Tanaka et al., 2018]。
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習字が心に与える心理的効果
① 静かな時間が“自己制御力”を育てる
筆を運ぶとき、子供は自然に「今、この瞬間」に意識を向けます。
この“マインドフルな集中”が、イライラや不安を抑えるトレーニングになります。
実際に、書道を習っている子供は、
衝動的な行動や怒りの爆発が少ない傾向があるとされています[APA, 2021]。
② 丁寧に書けた喜びが“自己肯定感”を育む
「前より上手に書けた」「先生に褒められた」――
このような小さな成功体験が、自己効力感(自分はできるという感覚)を強化します[Bandura, 1997]。
さらに、作品として残ることで「形に残る達成感」も味わえます。
③ “丁寧さ”と“粘り強さ”が育つ
習字は、一画一画をゆっくり積み重ねて完成させる作業。
失敗しても最初からやり直す過程が、忍耐力と継続力を育てます。
心理学ではこれを“グリット(やり抜く力)”と呼び、
人生の成功や幸福感に深く関係しているとされています[Duckworth, 2016]。
習字を通して育つ“非認知能力”とは?
習字は「テストで点が取れる力」ではなく、
心の力(非認知能力)を育てます。
- 集中して落ち着ける力(自己制御)
- 丁寧に取り組む力(粘り強さ)
- 形に残る喜び(達成感)
- 失敗しても挑戦する勇気(レジリエンス)
これらの力は、将来の学習意欲・社会性・ストレス耐性の基盤になります。
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家庭でできるサポート法3選
① 「結果」より「集中してる姿」を褒める
「きれいに書けたね」よりも「すごく集中してたね」と声かけ。
努力を認めることで、内発的動機(自分から頑張る気持ち)が育ちます。
② 家でも“静かな時間”を作る
テレビやスマホを消し、10分だけ“集中する時間”を設ける。
この習慣が、子供の情緒安定と集中力維持に大きく役立ちます。
③ 親も一緒に“書く体験”をする
一緒に筆を持つことで、子供は“共感と安心”を感じます。
親が書く姿勢を見せることが、最も自然な教育になります。
まとめ|“字”よりも“心”を整える習い事
習字は、
・集中力と感情コントロールを育てる
・自己肯定感と粘り強さを養う
・子供の心を静め、穏やかにする
――そんな“心を整える教育”です。
大切なのは「うまく書くこと」ではなく、
“書く過程”を楽しむこと。
墨の香り、筆の重み、紙の手触り――
五感を使って書く経験は、子供の“心の落ち着き”を育てます。
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FAQ
Q1. 習字は何歳から始めるのがいい?
→ 5〜7歳(文字への関心が出る頃)がおすすめ。筆圧や姿勢が安定しやすく、集中も続きます。
Q2. 字が下手でも大丈夫?
→ 大丈夫です。大切なのは“整える時間”を楽しむこと。うまさより“丁寧に書く心”が育ちます。
Q3. 習字と硬筆、どちらがいい?
→ どちらもおすすめ。硬筆は実用性、書道は感性と集中力。併用も効果的です。
参考文献
- Davidson, R. J. (2019). The Emotional Life of Your Brain. Penguin Books.
- Duckworth, A. (2016). Grit: The Power of Passion and Perseverance. Scribner.
- Bandura, A. (1997). Self-Efficacy: The Exercise of Control. Freeman.
- Tanaka, S., et al. (2018). Fine motor skills and brain development in childhood. Developmental Neuroscience, 40(2), 104–117.
- APA. (2021). Mindfulness practices in child development.
- 厚生労働省. (2023). 習字・芸術教育と児童の情緒安定に関する調査報告. https://www.mhlw.go.jp/


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