「野球をやらせたら、礼儀や根性がつくって本当?」
「厳しい練習で、逆に子供の心が折れないか心配…」
そんな疑問を持つ親御さんは多いと思います。
実は、野球は子供の脳・心・社会性を総合的に育てる“教育型スポーツ”。
しかし、指導や親の関わり方次第で、その影響はプラスにもマイナスにも変わります。
この記事では、10年以上にわたり児童福祉施設でスポーツ活動を指導してきた経験から、
「野球が子供に与える影響」と「親ができるサポート法」を詳しくお伝えします。
野球は子供の成長にどんな影響を与える?
野球は、運動神経・集中力・チームワーク・精神力など、
心身のバランスを総合的に鍛えるスポーツです。
また、試合や練習を通じて「失敗」「責任」「仲間」と向き合う機会が多く、
子供の社会的・情緒的な発達を促すことが研究で確認されています[Eime et al., 2013]。
脳科学で見る「野球が育てる力」
① 集中力と判断力を高める前頭前野の活性化
野球は、瞬間的な判断が求められるスポーツ。
脳の前頭前野(判断・抑制・集中の司令塔)を強く使うため、
自然と「考えて動く」力が鍛えられます[Ratey, 2008]。
② セロトニン・ドーパミンが増えて心が安定
キャッチボールや打撃などの反復運動は、
脳内物質セロトニン(安心感)とドーパミン(やる気)を分泌させ、
ストレスを和らげ、前向きな思考を促します[厚労省, 2023]。
③ チームスポーツ特有の“社会的報酬回路”
仲間と協力した時に得られる「快感」は、
脳の“報酬系”を刺激し、協調行動を促す神経回路(前帯状皮質)を育てます[Decety & Jackson, 2004]。
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心理的に見た“野球の良い影響”
① 自己肯定感の向上
「昨日より遠くに投げられた」「ミスしても立ち直れた」
――こうした小さな成功体験が積み重なることで、
“できた自分”を認められる力(自己肯定感)が育ちます[Bandura, 1997]。
② チーム意識・協調性の発達
野球は「一人では勝てない」スポーツ。
仲間のために動く経験が、社会的共感力を育てます。
心理学的にはこれを“社会的利他性(prosocial behavior)”と呼び、
学校生活や人間関係にも良い影響を与えることが知られています[Eisenberg, 2006]。
③ 継続力・忍耐力の育成
練習や試合の中で「悔しい」「もう一回挑戦」と思うたびに、
脳内でドーパミンが再分泌され、“頑張る回路”が形成されます。
これが後に、学習意欲や勉強の集中力にも好影響を与えます。
注意したい“悪い影響”と親の関わり
① 結果重視になりすぎると“条件付きの自己価値”になる
「勝てば褒められる」「ミスしたら怒られる」――
この環境が続くと、子供は「結果でしか価値を感じられない」傾向になります。
心理学ではこれを「条件付き自己肯定感」と呼び、
ストレスや完璧主義の原因にもなります[Assor et al., 2004]。
② 指導の厳しさが恐怖学習になることも
大声で叱責される・失敗を責められるなどの経験は、
脳の扁桃体を過剰に刺激し、不安・緊張・萎縮を引き起こします。
これが積み重なると、「挑戦しない子」になってしまうこともあります。
③ 親が“監督”になりすぎるリスク
練習後に「なんで打てなかったの?」と責めてしまうと、
子供は「親にがっかりされた」と感じ、モチベーションが低下します。
親は監督ではなく、応援団の立場でサポートすることが大切です。
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家庭でできるサポート3ステップ
① 結果よりも努力を称える
「ヒット打てなかったね」ではなく、「最後まで集中してたね」と声をかける。
努力を評価する声かけが、挑戦意欲と安心感を育てます。
② 試合後は“振り返りよりリセット”
「次どうする?」よりも「お疲れ様」「楽しかったね」で一度心を休ませる。
感情を落ち着けることで、脳が自然に学びを整理します。
③ “野球以外の時間”も大切に
音楽・遊び・家族との食事など、リカバリー時間が脳の成長には欠かせません。
「頑張る」と「休む」のリズムが、長く続ける力を生みます。
まとめ|野球は「勝つこと」より「人を育てる学び」
野球は、
・礼儀を学び
・チームで協力し
・失敗を乗り越える力をつける
――まさに「生きる力を磨くスポーツ」です。
ただし、結果を求めすぎず、努力を認める関わり方をすることで、
野球は“勝ち負けのスポーツ”から“人を育てる教育”へと変わります。
【内部リンク】
- 【大人も子供も】身体を動かして運動しながら遊ぶと脳が育つ!【子育て脳科学】
- 【主体性】親がよくやっちゃう先回り教育は子供の主体性をなくす!【子育て】
- 【教育心理学】知っていれば応用が利く!子育てに役立つ心理学5選【まとめ】
FAQ
Q1. 野球の厳しい指導は必要ですか?
→ “厳しさ”よりも“意味のある挑戦”が大切です。怒鳴る指導は短期的な成果は出ても、長期的には心を萎縮させます。
Q2. チームでうまくいかない時、どう支えれば?
→ 「どう感じた?」「誰と話してみたい?」と気持ちの整理をサポートすることで、人間関係の学びが深まります。
Q3. 試合に出られなくて落ち込んでいます。
→ 「見てる時間もチームの一部だよ」と伝えましょう。役割の多様性を理解させることで、他者理解も育ちます。
参考文献
- Eime, R. M., et al. (2013). The health benefits of sport participation for children and adolescents. BMC Public Health, 13(1), 1–9.
- Ratey, J. J. (2008). Spark: The Revolutionary New Science of Exercise and the Brain. Little, Brown and Company.
- Bandura, A. (1997). Self-Efficacy: The Exercise of Control. Freeman.
- Assor, A., Roth, G., & Deci, E. L. (2004). The Emotional Costs of Parents’ Conditional Regard. Journal of Personality, 72(1), 47–88.
- Decety, J., & Jackson, P. L. (2004). The functional architecture of human empathy. Behavioral and Cognitive Neuroscience Reviews, 3(2), 71–100.
- Eisenberg, N. (2006). Prosocial Behavior in Children. Developmental Psychology Review, 22(4), 417–446.
- 厚生労働省. (2023). 子どものスポーツ活動とメンタルヘルスに関する調査報告. https://www.mhlw.go.jp/


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