「今から〇〇くんの家行ってくる!」
時計を見ると夜7時半。
「ちょっと待って、もう遅いよ」と言っても聞かず、
靴を履き始める——そんな経験、ありませんか?
親としては、「危ない」「迷惑」「非常識」と思って当然です。
けれど、子供の頭の中では、まったく違う理屈が働いているのです。
この記事では、夜に友達の家へ行きたがる子の心理を深掘りしながら、
「禁止ではなく納得を促す」対応法を紹介します。
子供が夜に遊びに行きたがる3つの心理
①「まだ遊び足りない」“報酬系”の暴走
子供の脳では、楽しいと感じるとドーパミンが分泌されます。
ドーパミンは「もっと!もっと!」と欲求を刺激する物質。
遊びが終わる時間になっても、「もう一回!」「ちょっとだけ!」が止められないのは、脳が快楽を継続したがっているためです[Schultz, 2016]。
特にゲームやSNSなどの遊びは、報酬系が強く刺激されやすく、
「夜でも続けたい」という衝動を引き起こします。
②「友達に置いていかれたくない」仲間意識の本能
小学生高学年〜中学生にかけて強くなるのが、仲間意識(peer attachment)。
「みんなで集まってるのに、自分だけ行けない」となると、
“孤立”への恐怖が強く働きます。
この時期の脳では、社会的つながりを感じるとオキシトシンが分泌され、安心を得ます。
そのため、「友達と一緒にいる時間=安心」「帰る=不安」という構図が生まれます[Carter, 2014]。
③「親に反抗してみたい」自立心の表れ
夜に出かけたがる行動は、自立欲求のサインでもあります。
「自分の意思で決めたい」「もう子ども扱いされたくない」
という心理が裏にあるのです。
親が「ダメ!」と強く言うほど、
「なんで信じてくれないの?」と感じて反発が強くなります。
つまり、夜遊びをめぐる攻防は、“自立と信頼のバランス”の問題でもあるのです。
年齢別で見る「夜に行きたがる」背景
| 年齢 | 背景心理 | 対応ポイント |
|---|---|---|
| 小学校低学年 | 遊びが終われない(楽しいを継続したい) | 「続きは明日にしようね」と具体的に“次”を提案する |
| 小学校高学年 | 仲間から外れたくない・友達関係の不安 | 「今から行くと相手の家族が困るよね」と“他人視点”を促す |
| 中学生 | 自立・反抗・夜への好奇心 | 「夜に出るのは危険」という“信頼ベースの話し合い”を |
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①「ダメ!」の前に理由を共有する
禁止する前に、“なぜダメなのか”を共有しましょう。
NG例:
「夜は危ないからダメ!」
OK例:
「夜は見えづらくて事故も多いんだ」
「相手の家の人も、夜はゆっくりしたい時間かもしれないね」
こうした“共感+理由”の説明は、前頭前皮質(思考の司令塔)を活性化させ、
子供が自分で納得しやすくなります[Steinberg, 2010]。
② “信頼ベース”でルールを作る
「夜は出ちゃダメ」ではなく、
「○時までならOK」「○○の家だけは親同士が知っているからOK」など、
子供と一緒にルールを作ることが大切です。
ルール作りに関わることで、子供は「守る責任感」を持ちやすくなります。
親が一方的に決めたルールより、共に決めたルールは守られやすいことが研究でもわかっています[Baumrind, 1991]。
③ 「帰ってきたときに褒める」
夜の外出をやめられたとき、
「ちゃんと約束守れたね」
「今日は判断がよかったね」
と褒めると、自己制御力(self-control)が強化されます。
これは前頭前野の神経回路の発達を助ける行動で、
長期的に“我慢できる子”を育てます。
④ 夜に「退屈」を埋める家庭習慣を作る
夜に出たがる子ほど、家での“リラックス時間”が少ない傾向があります。
親子でボードゲームをしたり、軽くおしゃべりをしたり、
「夜でも楽しいことが家にある」と思わせることがポイントです。
これは家庭が“安心の拠点”になる学習であり、
社会的安心感(social safety)を高める効果があります。
我が家の体験談
ある日、長男(当時11歳)が言いました。
「今から○○の家行ってくる!」
時間は夜8時過ぎ。
私は一瞬イラッとしましたが、
深呼吸して「なんで今行きたいの?」と聞くと、
「LINEでみんなで集まってるって聞いた」とのこと。
私はこう答えました。
「行きたい気持ちはわかる。でも、夜は危ないし、相手の家族も寝る準備をしてるかもしれないね。明日の放課後にしたら?」
すると彼はしばらく考え、
「うん、じゃあ明日誘ってみる」と自分で折り合いをつけました。
このとき改めて感じました。
「共感して理由を話す」だけで、子供の行動は落ち着くということを。
まとめ|“夜の外出”は自立の入口でもある
夜に友達の家へ行きたがるのは、
ただのわがままではなく、成長と自立のサイン。
親が禁止だけで終わらせず、
「なぜダメか」「どうすればいいか」を一緒に考えることで、
子供は“思考と感情のバランス”を学んでいきます。
焦らず、感情的にならず、
「信頼の会話」を積み重ねていきましょう。
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参考文献
- Schultz, W. (2016). Dopamine reward prediction-error signalling: A two-component response. Nature Reviews Neuroscience, 17(3), 183–195.
- Carter, C. S. (2014). Oxytocin pathways and the evolution of human behavior. Annual Review of Psychology, 65, 17–39.
- Steinberg, L. (2010). A dual systems model of adolescent risk-taking. Developmental Psychobiology, 52(3), 216–224.
- Baumrind, D. (1991). The influence of parenting style on adolescent competence and substance use. Journal of Early Adolescence, 11(1), 56–95.

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